彼の事が好きだと気付いたのは、何時だったか。 ただ、彼の側にいられるだけで嬉いと感じたのは何時だったか。 少しでもあの人に近づきたくて。 あの人の事を少しでも知りたくて。 それなら・・ どうせなら、本人に恋の悩みを聞いてもらおうと思った。 もちろん、誰が好きであるかは知らせずに・・・。 「友雅さん、あの・・・ちょっと話を聞いてもらえませんか?」 二人で京の散策に出た帰り道、あかねが思い切った様に尋ねた。 「ああ、何だい神子殿?」 改まって何の話だろうか、と思いながら友雅は立ち止まってあかねの方を窺う。 「実は・・その・・。」 「?」 あかねは、友雅と目が合うと微かに頬を染めて俯いた。 友雅は、訝しく思いながらも目で先を即す。 「あの・・実は私、好きな人がいるんです。それで・・・・。」 「!」 彼女のその言葉を聞いた瞬間、一瞬厳しい顔になった友雅は、すぐに動揺を押し隠して穏やかに尋ねた。 「それで?」 「それで・・、あの、もしよかったら友雅さんに相談にのってもらえないかと思って・・・。」 「・・・・・・・。」 「あ、あの私ってこの世界の事良く知らないでしょう?だから・・・色々教えてもらえたらと思って・・。こういう事ってやっぱり友雅さんが一番知っていそうだし・・。」 友雅が押し黙ったまま、何も反応を示さ無いのを見てあかねは呆れられたのだと思い、 「ごめんなさいっ。いきなり・・いやなら断ってもらって全っ然構わないんですっっ!」 「・・・・・・・。」 「忘れて下さいっ。」 まだ何も言わない友雅にやはりこんな事言うんじゃなかった、と思い切り後悔しながらくるりと背を向けて走り出そうとしたあかねの腕を友雅が掴んだ。 びくり、とあかねの体が硬直する。 その背中を見ながら、友雅は深い溜息をついた。 「やれやれ、せっかちだね。待ちなさい神子殿。それで、その幸運な男は誰なのかな?こちらの事を教えて欲しいと言うからには、天真や詩紋ではないのだろう。という事は・・頼久?それとももしかして、泰明殿かい?」 「あ、あのっちがっ・・・・。」 真っ赤になってうつむいたあかねに、友雅は表面上は優しい笑顔を見せながら内心では酷く動揺していた。 彼女が恋の相談を自分に持ちかけてくる、という事は自分はその「好きな人」ではないと言う事だ。 その事実が、この現実が、本当の事だとは思いたくはなかった。 ましてや、他の男の事を相談されるなどとは! だが、闘わずに引くつもりは無い。 恋の相談にのれというのであれば、それを逆に利用して彼女に近づけばいいのだ。 何時も一緒にいれば、逆転の機会は幾らでも出来るはずだ。 内心で決意を固めた友雅に、 「ごめんなさい。やっぱり言えません。」 とうつむいたままあかねが言った。 「ふむ、まあいい。相談にのりましょう、姫君。」 友雅は、自分の思いを悟られない様にことさら明るい笑顔でそう答えた。 「!。本当にいいんですか?あっありがとうございますっ。」 友雅はあかねの嬉しそうな顔を見て嫉妬でどうにかなりそうだと思いながらも、表面上はにこやかに頷いた。 さて、どうなるんでしょう?(^^) 何だかあかねちゃん子供っぽいです。 |